毎日新聞2000.1.3
石原慎太郎氏


 −−田中(角栄)金権批判は石原さんの原点であり、竹下登さんは田中流「経済統治」の継承者です。政界の「竹下支配」が終わりに近づいたところで石原知事が生まれた。何かを暗示していると思うのです。
◆でも、まだ、お化けは生きてるよ(笑い)。
 −−いや、今年は確実に変わる。問題は、その後に何がくるかです。どう見ますか。
◆ボクは高度成長のころからへンな予感があってね。このままじゃあすまんぞっていう気がしてさ。新しいストイシズム(禁欲主義)を誰が最初に言い出すか。それを標傍する政治家が精神的に日本人をつかんでいけるんじゃないかと思ってましたね。まあ、幸か不幸か国の財政が逼迫してだね、国が左前になったわけよ。やっぱり「経世会」(旧竹下派)が表象したみたいな、ああいう質の政治というものは淘汰されていかざるをえない。ただ、まだやってるね。バラマキを(笑い)。
 −−石原さんが評価する政治家である中曽根(康弘)さんの保守合同論はどうですか。
◆それ、自自公のこと?
 −−いや、いわゆる「自自合流」ですね。
◆小沢(一郎)はダメだ。あんなものは金日成の息子と同じ。竹下、金丸(信)の親せきじゃなかったら、どうにもいかないよ。人騒がせだったんだから、ひとりで野に下って一回選挙したらいい。それが政治家としての責任というものでしょう。
 −−安保・憲法は小沢さんが引っ張ると信じられた時期があった。それが幻想だったとすれば、次の政界再編で石原さんが再ひ国政に戻る可能性は。
◆もうね、そういう発想は古いね。安易過ぎてね。戻ってきて新党つくるとかさ、そういうことじゃねんだよな。たとえば医療の問題にしたって経世会がメチヤクチャなことしたんだよ、薬価(の制度改革)を凍結してだな。病院というものが医療のコングロマリット(複合企業体)としていかにいいかげんか。そういうあしき医療の体質をサポートするような政治はやっばり崩壊していくし、そのためのディスクロージャー(情報開示)を東京からやろうと、ボクは思ってる。
 −−それだけ経世会を小気味よく批判されるあなたが、こと竹下さんに関しては、ただ感心するのみという感じですね。
◆そう(笑い)。いや、やっばりね、モノ書きの目で見ちゃうとね、ああいう奇妙なね、眠りネコみたいな、化け物みたいな人はめったにいないもの。
 −−石原さんは政治家は言葉が大事だといいながら、竹下さんの「力を備えるほど言葉を信じない逆説」に感嘆し、「したたかな個性」に舌を巻く。
◆なんとも私にとってはオブジェクテイブ(好奇心をそそる観察対象)で、不思議な存在だからさ(笑い)。「言語明瞭、意味不明瞭」ってのはね、竹下さんは完全に自分の言葉を放棄したわけだから。あの人は自分で言葉を捨てたんだよ。だからおもしろいんだよ。
 −−年末のテレビで「経済主義」の後にくるものは何かと間われ、「見識」と答えておられた。都知事として今年、どういう見識を示されますか。
◆国のシステムが古くなっているのに、税も含めて法の体制が変わっていない。だったら国と衝突して、ケンカして、訴訟を起こされて負けてもいいと。恥をかくのはわれわれ(東京都)ではなく、勝った方(国)だって言ってるんですよ。国政の本質を変える最初の引き金を引きたいと思ってるんでね。
 −−さしあたり、米軍横田基地の返還実現ですか。
◆そりゃ、(今年は米の)大統領選挙もありますしね。それまでにはとても間に合わんだろうけれども、もう一回、先のことを考えて横田の問題をね。それも大田(昌秀・前沖縄県)知事みたいにぺンタゴン(米国防総省)行って「普天間返せ」なんて女学生の金切り声みたいなことじゃあ、外交にならねえよな。そりゃあ、少しはこっちは分かってる。人脈もあるから、やろうと思ってますけども。ああいうものが動き出すことで日本人が自信を取り戻すっていうのかな、とにかく東京の都心にそんなものがあったのかということを知ることが大事なんだよ。日本入て、そういう自己認識さえないんだから。
 −−「太陽の季節」(石原氏の芥川賞受賞作)の中村光夫さん(故人。文芸評論家)の選評を覚えていますか。
◆覚えてる、覚えてる。
 −−「ポーズと誇張に満ちているが、真摯さがある」というくだりがあったと思います。
◆オレは別にポーズつくってるわけじゃねんだけどなあ(笑い)。スタイルはあるけどね。ポーズっていうのは三島(由紀夫)さんみたいに、自分の写真1枚撮るのにもこう、自意識が出るようなのを言うんだよ。
 −−自分のスタイルが世論に受け入れられているという手応えを感じていますか。
◆いやまあ、今までと変わらないんだけど、責任ある地位についたから言ってることに係数がかかって見えるだけでね。今までと同じことをやっていくしかないんだけれども、とにかく理解されなきゃしようがないものねえ。
【聞き手・山田孝男】