毎日新聞1999.12.29経済がわかる欄コラム経済観測

2000年前の問題

「ミレニアム(千年紀)」ブームとか。

 大みそかから元日にかけて、全国各地でカウントダウンのイベントが行われ、大変な人出が予想されている。年の瀬のデパートには10万円もするおせちなど豪華なミレニアム商品が所狭しと並ぶ。

 こんな光景を見て、コンピューターの2000年問題ではなく、「2000年前の問題」を思い出した。ローマの人々が「パンとサーカスに酔いしれた話である。

 「ローマ人の物語」を書き続けている塩野七生さんによると、こんな現象が起きたのは紀元30年代の後半から40年代前半にかけて。

 火付け役は24歳で第4代皇帝にに就任したカリグラだった。若き皇帝は大衆受けを狙い、昔からあった1%の売上税(消費税のような税らしい)を廃止。

さらに、映画「ベン・ハー」に出てくる戦車競走の競技場など、後に「サーカス」と呼ばれる娯楽施設を次々に建設し、イベントを主催した。

「市民が喜んでくれるなら、何でもする」という姿勢。

出来る限りのイベントに臨席し、喝さいを浴びたという。

その2000年後、高齢者の介護保険料を突如減免。

赤字路線化することが見え見えの整備新幹線を推進しようとする首相が現れた。

年齢は違うが、「景気のためなら何でもする」という発想や、人が集まるとっころには進んででかけるところなどよく似ている。

 快楽は長続きしない。ローマ人たちは、皇帝の大盤振る舞いに慣れ、働かなくなり、経済が衰退、国家財政はあっという間に赤字に転落。カリグラはしかたなく相続税を増税したところ、市民は手のひらを返したように皇帝を非難。4年後には、近衛師団の手で殺害されたしまったという。

 もちろん、今のミレニアムイベントはサーカスとは異なる。しかし、国の財政は借金地獄に陥っている。それ以上に憂慮されるのは、大盤振る舞いに慣れきってしまったことだ。

 新年こそ、こうした問題を原点に立ち返って考えるとしになってほしい。

 真剣な論議が起きることを念じつつ、皆様良いお年を。

(邦)