1999.12.11秋田魁新報社説

  教師も学んでほしい、「世間の風」

 学校の先生たちはもっと世間の風にさらされる必要がある。教員の採用、研修について検討してきた教育職員養成審議会が、文相に提出した答申でそう提案した。
 教員は学校という閉ざされた場で、もっぱら子どもを相手に一日を過ごす。独り善がりにならないとも限らないし、幅広く豊かな人間関係や社会性に欠けるうらみがあるとの指摘も少なくない。
 答申が「社会体験研修」の一層の充実を求めたのはそうした問題意識からだ。デパートやホテルなどの一般企業で、実際に客の相手をして対人関係などを学ぶことの意味は確かに高まっている。
 全国の都道府県、政令市のうち四十六の教育委員会では、既に最長で一年の長期体験研修を実施している。こうした機会をさらに広げ、対象教員も増やしてほしい。各教委は補充教員の手当てなどバックアップ体制を早急に整える必要があろう。
 ただ、長期研修の対象をただちに全教員に広げるのは無理な面もある。答申は、夏休みなどを利用した一週間から一か月間の短期研修なら可能として、これを全教員に一度は経験させるよう求めた。
 民間企業の考え方や振る舞いを完全に身に着けるには確かに時間が必要だが、その長短よりも、わずかでも経験したかどうかの差の方が大きいような気がする。
 各教委はさっそく取り組みを始めてほしい。これまでは派遣研修をことさら忌み嫌う現場もなくはなかった。研修を終えて学校に戻ってきたら、その成果をきちんと評価する仕組みも必要になってこよう。
 教職を社会に開かれたものにする。その同じ考えから、答申には、ほかにもいくつか重要な提言がある。
 教員を目指す人の中には、大学の新卒者以外に民間企業から転職を図る人もいる。答申はそうした幅広い人材を確保しやすくするために、新卒者とは別の基準で選考するよう求める。社会人の採用枠をあらかじめ設けることも勧めている。
 同じ個性、同じ経歴の持ち主で教員室が一色に染まってしまっては弊害が大きい。多様な人たちが多様な価値観をぶつけあってこそ活力が生まれ、子どもを生き生きと育てることができる。そのために複数の入り口を設けることは当然だ。都道府県教委の積極的な取り組みを求めたい。
 教育に直接携わる小、中、高校などの職員は、採用後一年間は身分保障がなく、その間に問題がなければ正式採用する仕組みになっている。答申は、この条件付き採用期間中の評価の厳正化、さらにその後の分限処分の的確な運用も求める。
 他に適切な職種があれば転職させることも検討せよという。厳しいようだが、機械や物ではなく、可塑性に富んだ子ども相手の仕事であればやむを得ないだろう。教職を閉鎖社会にしないためには、退場の自由度もまた高めなければならない。
 学級崩壊などで学校は今、空前の難局にある。先生たちは技量は当然のこと、人間としての質もかつてないほど厳しく問われる時代になったことを覚悟してほしい。