2000.1.30 毎日新聞 社説
教研集会
創意凝らした総合学習に

 教育界で、今、最も注目を集めているのが、「総合的な学習の時間」だろう。知識を一方的に教え込む教育から、自ら学び、考える力を育成する21世紀の教育ヘの転換を目指す新しい学習指導要領のシンボルとなる時間だ。何を、どう教えるかは、各学校の創意工夫にゆだねられている。教科書はなく、数値評価もしない。従来の画一一斉暗記型になりがちだった教科とは、まったく異なる新しいタイプの授業になる。
これが、小学校は週3時間、中学校2〜3時間、高校は1〜2時間程度、新たに時間割に組み込まれる。新指導要領は、小・中学校は2002年度、高校は2003年度からの実施だが、「総合的な学習の時間」について文部省は、移行措置として今年4月からの先行実施を奨励する方針を打ち出した。
 まさに突入前夜。「総合的な学習の時間」ヘの関心は高まっており、金沢市で先日開かれた日本教職員組合(日教組)の教研集会でも、山口県で開催中の全日本教職員組合(全教)の教研集会でも、これにどう取り組むかが熱心に論議された。
日教組の教研集会では、総合学習がらみの報告が100本を超えた。
特徴的だったのは、受験との関係で難題を抱える中学校や高校からの報告が増えたことだ。学校の中庭に「ビオトープ」(自然環境復元園)を作り、環境問題をテーマに、体験学習に取り組んだ高校の試み(千葉県)や、夜間中学生との交流で、夜間に通う人たちの勉強ヘの一途な思いを知り、学習の大切きを痛感し、成長していく実践(大阪府)などは特に注目された。
 総合学習に対する受け止め方は、地域や学校によりかなり差がある。教育観、学力観の転換につながる大きな改革だけに、まだ戸惑いと混乱の中にあるところも多いようだ。それでも教研集会の報告を聞くと、この時間を閉塞状態にある学校教育を再生するチャンスととらえ、積極的に生かしていこうという動きも出てきているように思われた。
 これからの学校教育に占める総合学習のウエートは極めて大きいが、成否のカギを握るのは、やはり現場教師だろう。従来なら教科書に書いてあることを覚えきせるだけの授業でも何とかなった。しかし総合学習ではそうはいかない。教師が、事前に十分準備し、学習の意義、本質を理解していなければ、子供の興味や関心、成長は引き出せない。
 文部省は昨年、先導的に取り組んできた学校の事例集を出した。街には、総合学習関連の出版物があふれている。しかし、参考にするのはいいが、それを教科書代わりに使って右から左に流すだけでは、意味がない。やはり、同僚らとともに子供や学校、地域の特色に配慮しつつ、自分たちで悩み、考え、創り上げていかなければならないだろう。難しいが、それが教師本来の仕事であり、喜ぴでもあるのではないか。
 教育行政は、教師の創意工夫を励まし支援する体制を取ってほしい。日教組教研集会では、総合学習を進めるにあたって予想される、外部講帥ヘの謝礼、パソコン、保険などの新たな経費を、きちんと要求していくべきだとの意見も出された。大事な問題だ。教員定数の在り方、学級人数など、教育条件の改善に向けても、議論を進めてほしい。