2000.1.15毎日新聞社説

就職戦線
あせらずに自立の道筋を

 今春卒業予定者の就職内定率(昨年12月1日現在)は、大学で74・5%、高校で67・3%と、過去最低となっていることが、文部、労働両省の調査で分かった。
長引く不況で、リストラによる中高年の解雇も相次いでいる時期に就職活動が重なった若者には、まことに気の毒というほかはない。労働省はじめ関係当局、大学・高校などの就職担当者、そして経済団体、各企業は、それぞれの場でできる限りの支援策に取り組み、社会的責任を果たしてほしい。
  ただ、この就職戦線の厳しさは、不況期という以上に、今が政治も経済も社会も大きく変わりつつある転換期にあることを示しているように思われる。戦後日本を形作ってきた「会社社会」が、激しく揺らいできているのである。
 右肩上がりの成長が続いていた時代には、できるだけいい学校、いい会社に入ることが、多くの親子の目標だった。そして卒業時点で、その学校とマッチした会社に入ることが可能だった。後は会社のために一生懸命働けば、それに見合う豊かさを手にいれることができた。少なくともそう夢見ることができた。
 しかし、かつてはかなりの成績でなければ入れなかった銀行や証券会社がバタバタと倒れている。就職人気が高かった一流企業でも不振に陥り、採用人数を減らしている。教育システムの「最終ゴール」である就職が、これまでのように機能しなくなってきている意味は大きい。
 今回の調査で注目されるのは、就職希望率も68・1%(大学)と落ち込んでいることだ。内定率は就職希望者に対する内定者の割合であり、それ以前にあえて就職を希望しない学生が相当数いるのである。
 文部省調査では、大学卒業後に就職も大学院進学もしない「その他」が、昨春は約10万6000人と卒業生の20%近くにのぼった。10年前の5倍だ。高校卒業後の「その他」も増えた。フリーターと呼ばれるアルバイト暮らしの若者も増えている。総務庁の調査では、15〜25歳の労働力の中で、パート・アルバイトの占める割合は約34%と、この10年ほどの間に20ポイントも上昇した。就職3年以内で辞める者の割合が 年々増加し、大卒の場合でも3人に1人になっていることも注目される。
 こうしたデータは今の若者のこらえ性のなさ、職業意識の低さを示すものとして非難されることが多かった。確かにそういう面があることは否定できない。しかし、新しい時代ヘの若者なりの精いっばいの対応と受け取ることもできるだろう。
 「環境団体やボランティア組織などで経験を積んで自分を磨き、社会貢献したいと考える志のある学生も少なくない」「経済的豊かさより、やりがいが大事と考える若者が増えている」・・・・。学生やフリーターと接する機会の多い関係者の中には、こう見る人もいる。それがどこまで広がり進んでいくかはまだよく分からないが、期待したいところだ。
 厳しい就職戦線に直面する今の若者は、どんな仕事をしたいのか、人生の豊かさとは何なのかを考えることを迫られている。試練ではあるが、どんな時代でも、いずれは、誰もが直面する問題だ。受け身ではない、自立した自分の人生を築き、歩んでいく契機にしてほしい。