2000.5.5こどもの日 読売新聞社説

本を友とする子どもに育て


 こどもの日のきょう五日、東京・上野に国際子ども図書館が開館する。今年はこれを記念した「子ども読書年」でもある。こんな時代だからこそ求められる、子どもと読書の強い結びつきについて考えたい。
 国際子ども図書館は国立国会図書館により、旧支部上野図書館を改修して開設された。絵本や児童書をそろえた「こどもの部屋」、各種の展示に使う「ミュージアム」などが設けられたほか、研究者のための内外の資料もそろっている。
 わが国では初めての国立の児童書中央図書館となる。アメリカやドイツでは早くからこうしたナショナルセンターが活動を続けているが、日本もこれでようやく、子どもの読書活動への国としての取り組みが始まることになる。その意義は大きい。
 本格サービスは二年後になるが、それまでの課題も多い。子どもが手にとって読める図書が三千冊というのは部分オープンとはいえ寂し過ぎる。蔵書の充実を急ぐ必要がある。「国際」と名乗る以上、海外の珍しい児童書を子どもたちが実際に楽しめるような工夫もぜひしてほしい。
 国際子ども図書館が開館にこぎ着けるまでには、政官民三者の協力による長い準備期間があった。出版界や民間のボランティア団体などの要望を受けて超党派の国会議員二百七十人による設立推進議員連盟ができてからでも七年になる。
 昨年夏には、衆参両院での決議で、開館に合わせて今年を子ども読書年とすることが決まった。衆院の決議では「国を挙げて子どもたちの読書活動を支援する施策を集中的かつ総合的に講ずる」とした。
 これを受けて官民で様々なイベントが企画されている。文部省は県単位の「子ども読書推進ネットワーク」構築に取り組んでいる。全国に五千以上ある「子ども文庫」などのボランティア組織をつなぎ、情報交流や合同研修などを進めるという。
 「国を挙げて」という割には一般の認知度はやや低いのかも知れない。しかし、イベントで一時的に盛り上がるだけでなく、こうした地道で将来につながる試みも記念の年にはふさわしい。関係者の幅広い取り組みに期待したい。
 子どもの「本離れ」は指摘され始めて久しい。ある調査によれば、一か月間に一冊も本を読まなかったという子どもは、高校生で69%、中学生で55%、小学生で15%にも上る。一か月の平均読書量は小学生の場合、五年前からO・3冊減って一冊、しかも毎年減りつづけている。
 子どもにとっての本の意味を考える時、一昨年の国際児童図書評議会での皇后さまのビデオ講演を思い出してみるのもいい。「子どもたちが自分の中にしっかりとした根を持つために、喜びと想像の強い翼を持つために、痛みを伴う愛を知るために」読書が必要だとの訴えは印象的だった。
 多くの子どもたちは今、居場所を失い、現実に追い立てられ、いじめや暴力に取り囲まれて日々を過ごしている。今年を契機に、根も翼も愛も忘れている彼らを救い出す試みが定着すればいいと思う。