稼げる社員になる必須「七つの才」  週刊朝日2001.8.31日号 25p

 

 給料に見合う仕事をしていますか。転職しても同じ給料をもらえる自信がありますか。サラリーマンならだれしもドキッとする質問を投げかけユーモアたっぷりに対策を指南する本『稼ぐ人、安い人、余る人』(幻冬舎)が話題だ。著者である人材・組織コンサルタントのキャメル・ヤマモト氏に「生き残りの奥義」を聞いた。

 


 小泉純一郎首相が唱える構造改革が本格化すると、競争が激しくなり、企業組織もより大胆に変わらざるを得ません。その「痛み」の直撃を受けるのは中高年のサラリーマンでしょう。

 いままで「稼ぐ人」だと自他ともに認められてきた人の大半が、いきなり「余る人」と認定され、リストラ候補に挙げられる。たと

えば、サラリーマン社会では「勝ち組」のはずの大企業の役員候補でも、人材コンサルタントの目から見て、トップにふさわしい実力があると思える人は1割しかいません。

「余る人」にならないためにはどうすればいいのか。人材組織コンサルティング業務を通じてわかった「稼ぐ人になれる七つの才」について、その考え方のエッセンスをお話ししたいと思います。


 

 著書のタイトルともなった「稼ぐ人」とは「自分が勤める企業を仮に辞めても稼ぐことができるような実力をもったタレント」。「安い人」は「パートタィマーのように単純労働を切り売りする人」。「余る人」は「給与に見合う働きができないという評価をされて、勤務先から『あなたは余っている。やめてほしい』と一言われるような人」というのが、山本氏の定義だ。

 


 日本企業の多くは国際競争に負けつつあります。その主原因は、生産力に見合わない人件費の高さです。中高年のサラリーマンの多くは、自分のことを「稼ぐ人」だと思っていますが、実際には人件費が高すぎて「余る人」になっている。あなたは転職して、今と同じ給料をもらう自信はありますか。

 収入レベルを大幅に落とせば「安い人」として生き残れるかもしれませんが、それも実際には難しい。まずは危機意識を持って現実を直視することから始めるべきです。

 アメリカでは、20代で転職を考え始め、30代前半で実際に転職。その後、数回の転職を経て、40歳前後で自分の力をフルに発揮できるポストに就いているというのが、理想的な成長モデルと考えられています。

 それと比べると、日本のサラリーマンの多くは転職経験がなく、自分の実力を客観的に見直す機会がなかったのではないかと思うのです。

 一度、自分の棚卸しをするつもりで、強みと弱みを徹底的に考えてみる。人材バンクに行ってみるのもいいかもしれません。

 


 

 "現実直視"とともに山本氏が重要視するのは、自分が本当にやりたいことは何かを考えること。人は"志"を持つことで成長すると思うからだ。


 今の仕事が、自分の本当にやりたいことだと断言できる人は、実に幸せな人だと思います。でも、そんな人は少数派ではないでしょうか。多くの人は、自分が本当にやりたいことは何かをあまり考えたこともなく、働き続けてきたのだと思います。

 考えるときは、まず極端な仮定をしてみることが有用です。たとえば、あと3カ月しか生きられないとします。そのとき何をして過ごしたいかを考えてみてください。次に余命を1年と仮定して、また考えてみる。さらに5年に延長して考えてみる。残された時間の長さによって、その間にやりたいことは変わるでしょう。そうして、自分の人生のビジョンを少しずつつくっていけばいいのです。

 


 

 やりたいことと今できること、どちらもまず自分でじっくり考えてみることが大切。それと並行して、率直に忠告してくれる友人を増やす努力も必要になる。

 


 アメリカの企業人には、メンター(指導者)を持っている人が、けっこういます。メンターというのは、上司のことではなく、自分の話を真剣に聞いてくれて、率直な批判やアドバイスをしてくれる人のこと。いわばスポーツのコーチのようなものです。

 コーチはプレーヤーよりも全面的にすぐれている必要はないので、信頼できる人であれば、同僚でもいいし、他社の友人でもいいし、若い部下でもいい。ひとりに限定する必要はありません。職種や年齢、性別の違う複数のメンターを持てれば最高です。

 そういう相手が見つかったら、自分のどこが売り物になりそうかを聞いてみてください。また、自分はこんなことをやってみたいけど、どう思うかと聞いてみてください。特に自分より若い人たちの意見は貴重です。彼らはまったく違う角度から物事を見ている可能性が高いからです。

 


 

 自分の今の実力を直視したうえで、本当にやりたいことが見つかったら、次の課題は自立した家族関係をつくることだという。

 


 中高年のサラリーマンが、新しいことに挑戦しようと思っても、家族のことを考えると決断できないというケースは本当に多いですね。でも、父として夫として、家族全員の生活を背負うのは、もうやめましょうよ。

 これからの時代は稼ぐことがますます大変になります。そこで求められるのは"家族の総力戦"です。

 なかなか難しいとは思いますが、まずは、子供も含めた家族全員に、現在のわが家の財政事情と今後の見通し、自分のやりたいことについて、率直に説明してみてください。父親の年収や勤務先の経営状態、老後資金のたまり具合などは、子供も知っているほうがよいのです。

 そうしたうえで、大学生の息子や娘には、学費を自力で調達するように言う。それが困難な場合は、出してやるのではなく貸し与え、いずれ返済させる。そのほうが、子供は早く自立するし、勉学にも身が入ります。

 妻にも自立を求めましょう。米国の企業家の多くは共働きです。配偶者に独立した収入があれば、それを当てにして、よりクリエーティブなことに挑戦できるからです。妻が収入を得るようになれば、より多くのリスクを取れるようになります。その代わり、夫も、いままで妻に丸投げしてきた家事などは応分に負担しなくてはいけませんが。

 自立した家族関係は、本当にやりたいことをやるために必要不可欠な基礎なのです。


 

       仕事で遊ぶのが「稼ぐ人」の極意

 日本の企業の多くは「負け組」になりつつある。その流れを変える特効薬は、中高年の意識改革しかないと山本氏は語る。

 


 50歳前後の人たちと話をすると、リタイア後にやりたいことを考えている人はいても、これから仕事で新しいことをやろうと考えている人はなかなかいません。60歳定年の影響なのでしょうが、そんな社会的な通念にこだわらず、老人観を変えるべきです。

 仕事で、いろいろな人に会って実感したことですが、人の頭脳は、少なくとも75歳ぐらいまでは衰えません。身体能力も、激しい運動などを別にすれば、ほとんど落ちません。50歳の人は、あと25年は働けます。やりたいことを見つけて準備していく時間は十分にあるのです。

 そのためには、いまいる会社を徹底的に利用するぐらいの気構えで臨むべきではないでしょうか。

 最近は「早期退職」という名のリストラを行う企業が続出していますが、日本の企業社会では終身雇用が前提とされてきたのですから、これは会社側の暗黙の契約に対する違反でしょう。当面会社にしがみつけるのなら、ぜひしがみつきましょう。

 給料をもらいながら次のステップへの準備ができるとしたら、こんなにおいしい話はありません。独立を目指す社員は、将来のことを考えて同僚や顧客を大切にするはずですから、会社にとっても歓迎すべきことだと思います。

 私はまだ40代ですが、30代後半にして年齢の壁に直面し、ショックを受けたことがあります。

 当時、戦略系のコンサルティングを学びたいと思い、外資系の数社を回って就職活動をしたのですが、どこも最終面接まではいくのに、そこで落とされてしまいました。理由を尋ねると、「あなたぐらいの年齢の人は、もうプロジェクトマネジャーになっている。自分より年配の人が部下にくるとやりにくい」と言われたのです。まだ30代なのに、若い人から見るともう邪魔者なのかなあと思い、本当にショックでした。そうした現実は米国でもあります。

 でも、中高年の経験者が求められている職場は、確実に増えています。若い人が起業したとき、最初のうちはよいのですが、しばらくして事業が軌道に乗りだすと、組織を円滑に運営できる、経験豊富で気の利いたマネジャーが必要になります。ところが、ベンチャー企業はそういう人材をなかなか獲得できない。若い人の良いパートナーになることは、とても大切なことだと思います。


 

 「余る人」から「稼ぐ人」へ。その転機は、自分にも何か新しいことができると思うことだ。また、稼ぐための必要条件は、自分が本当にやりたいことをやることだ。

 


 これからの時代は、やりたいことをやらないと稼げません。なぜなら、人という生き物は、自分が好きで仕方ないことなら寝食を忘れて没頭しますが、そうでないことには、そんなに頑張れません。没頭できる仕事を手にした人にとって、働くことは遊ぶこととイコールです。

 趣味でも仕事でもなんでも構いません。これまで何かに没頭したことはありますか。そうした経験があれば、あなたが本当にやりたいことを考えるうえで、大きなヒントになります。まずは、そのときのことをイメージしてください。そして、仕事で「遊ぶ」ことを目指してください。

 人間は50歳からでも成長します。

構成 本誌・喜多克尚



第一の才

志が高く明確である

 

ブロの人材鑑定人が人を見るときは、ます相手の「目線」、すなわち志の高さを見る。志は「稼ぐ人」の工ネルギ一源である。

第二の才

現実を直視する力

自分や自分のビジネスの「強み」と「弱点」をクールに直視する。バランス感覚を磨くこと、危機に敏感になることが重要。

第三の才

成果ヘのインスピレーションがわく

なにかをするとき、行き当たりばったりではなく、先々の展開を予測して仮説を立てられれば、常に主導権を握れる。

第四の才

失敗しながらやりぬくタフネス

「稼ぐ人」は、人のやらないことをやろうとするので、失敗はままある。そこでひるまないことが大切。

第五の才

リードしリードさせる

タレントを見つけ、その気にさせて、その人の勢いに自分も乗ってしまう。

第六の才

学習が早い

情報洪水の中で、新しい役に立つ情報・知識を素早く身につけ、使いこなし、しかもそれにとらわれない。

第七の才

仕事で遊んでいる

遊びなら命令されなくてもやり続けられる。「稼ぐ人」は「仕事」を「遊び」にできるので、とんでもなく頑張りがきく。