2000.1.14毎日新聞社説
光ファイバー
すでに大量に余っている

 IT(情報技術)革命で光ファイバーの必要性が叫ばれる一方で、実は日本の基幹部分では光ファイバーが大量に余っていることは意外に知られていない。
 光ファイバーは心線という単位で数えるが、都市間がどの程度の規模の光ファイバーでつながれているかというと、東京・大阪間ではNTTだけで40O心線以上、他の区間でもlOOから30O心線が敷設されている。
 KDDIや日本テレコムも主要都市間を数十心線でつないでいる。 光ファイバー1心線の伝送容量は80O億bps。bpsは1秒聞に1ビットの情報を送るという単位で、10億を意味するG(ギガ)を使って80Gbpsと表記される。
 東京・大阪間には、それがNTTだけで400本以上だから32兆bps以上。これも1兆を意味するT(テラ)を使って、32Tbpsと表記される。
 他方、東京・大阪間のピーク時の通信量は、電話が10Gbps、インターネットが10Gbpsで合計20Gbpsになる。通信量がもっとも多い東京・大阪間でさえ、1心線で十分に足りる。他の主要都市間も事情は同じだ。
 残る大量の光ファイバーは、何にも使われていない。使わなくても減価償却はしなければならないから、その負担が東西NTTの収益を圧迫している。
 なぜこんなことになったのか。1990年代後半に技術革新が起きた。レーザーの波長を何重も重ねて送れる波長多重技術が急速に進歩し、1心線の伝送容量が何十倍にも増えてしまったのだ。
 次に、光ファイバーの敷設状況はどうか。ビジネス地域では県庁所在地以上の都市で95%程度、10万人以上の都市で8割以上に達して、ほぼ敷設は終了している。
 都市全体の普及率も、県庁所在地クラス以上の都市なら6割、10万人以上の都市でも4割程度で、光ファイバーは家庭の近くまで達しようとしている。
 問題は一般に「最後の1マイル」と呼ばれる、家庭ヘの加入者線だ。日本の場合は地下で1.5キロ、地上で0.7キロの、合計2.2キロの加入者線ということになる。
 これが5万60O0bpsと、極端に遅い。しかし全部を光ファイバーに代えようとすれば膨大な金額と時間がかかる。採算もとれない。
 インターネットでは後発だった韓国は、この部分を従来の銅線のまま高速化して日本を追い抜いた。DSL(デジタル加入者線)と呼ばれる送信ソフト技術を活用したのだ。
 DSLなら、銅線のままで50万bpsから、最大6O0万bpsが可能だと考えられている。
 2OOO年末にNTT東日本は、接続を希望するDSL業者にさまざまな制限や料金を課して、公正取引委員会から警告を受けた。ただでさえ遅れた日本の通信の高速化を妨げた意味で、その罪は許しがたい。
 そして実は、通信線という視点からIT革命を考えれば、議論と対策が集中されるべきは、この加入者線の高速化なのだ。その方法は光ファイバーに限らない。
 通信の高速化を、道路などと同様の公共事業と同一視する愚を犯してはならない。