2001.1.8毎日新聞発言席
腐った家は建て替える
自由党党首小沢一郎

新世紀が始まる今年こそ、政治だけではなく経済も社会も含めた戦後体制を一新する第一歩を踏み出さなくてはならない。国民も夏の参院選を通じ明確な意思表示を行い、その結果自公は過半数を維持できなくなるだろう。
 参院選での野党協力に対し誤った二つの意見が広く流布されている。一つは内外共に難局を迎えており、政局の安定こそ欠かせないという意見だ。しかし、この考えは自らの既得権を守るために自民党政権の継続を望んでいるということに過ぎない。もう一つは政権構想を持たずに野党同士が選挙協力するのはおかしいという議論だ。これもまた間違いだ。
 自民党を中心にした連立政権は土台から腐っており、建て替えるしかない。国民から建て替えるという合意を得ることが参院選の主眼である。どのような歴史上の改革や革命もすべて腐敗した権力を打倒する、というさまざまな考えの市民たちの合意によって達成されてきた。
 野党が勝利すれば衆参で数の上でねじれが生じる。森喜朗政権に代わる新政権も選挙管理内閣に過ぎず、総選挙は早まるだろう。その時こそ、各党がわが国の将来設計図を国民に明示して、選択を求めればよいのだ。
 野党3党間の協議は、世間の予想以上に進んでいる。協力が実現していれば総選挙も逆転出来たはずで、各党とも痛感している。
 国民は当面の景気の行方だけでなく、殺伐とした事件、事故の多発にいらだちを感じている。少子化、国際化の波を肌身に感じ、現状のあらゆる社会システムに対して不信感を抱き始めている。同時に、自民党政治では何も対応できないことも知ってきた。従来の情性に流されることなく、変革を望むようになってきた。
 総選挙でも兆候は見えたが、長野、栃木知事選で一気に顕在化した。参院選ではより明確になるだろう。既得権にあぐらをかいた政治システムの限界を国民ははっきりと認識するようになった。
 日本を取り巻く東アジアの情勢も流動的で厳しい選択を迫られつつある。国内の日常的なことがらの変革も出来ない官僚任せの自民党では、世界の新潮流に対応できるはずもない。
 自民党の先延ばし政治によって病巣は拡大し、深刻になっている。痛いといえばモルヒネを注射するだけでは、完治は不可能だ。明治以来のすべてのシステムが機能しなくなってしまった以上、対症療法では限界だ。痛みは伴うが外科手術するしかない。
 日本には本当の意味での市民社会が実現しておらず、お上による統制社会が続いてきた。このため変革するにもツーレイト、ツーリトルで終わってしまっている。時代の急激な変化に十分対応するには、日本人自身が変わらなくてはならない。
 世論調査をみると政治に望むもののトップは景気回復だが、日本の現状をつぶさに考えるなら健全なる人間社会の回復が最も望まれるべきだ。日本人にはそれぞれ従来のシステムのままでなんとか生き延びたいとする心と、変革の心と相矛盾する二つの心が同居している。日に日に深刻化する病巣に、旧体制を代えることへの戸惑いもようやく薄らぎつつある。
 私は悲観論を述べているのではない。持論だが、自己改革、自己努力を伴わない楽観論は怠け者の議論に過ぎない。日本も、日本人も優れた潜在能力を持つており、ちょっとした意識改革でこの程度の危機は、容易に乗り切れる。まず国民が自らの心構えを変えなくてはならない。民主主義社会である以上、選挙で1票を行使することがすべての始まりだ。